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2008年2月

2008年2月27日 (水)

トイチ

Kare_top

 『トイチ』は子供が好きだった。

小学校の運動会を知らせる花火が澄んだ空に鳴り響くと、彼は決まって山の麓の家からお気に入りの黒い長靴を引きずり下りて来た。

「ひとぉーつ、ふたぁーつ、みぃーつ・・・」

 赤と白の玉が空高く投げ上げられる。

トイチは口を尖らせ、身を乗り出すようにして、その玉の軌跡を目で追う。いびつに曲がった片足、浅黒い顔と奇妙な形で突き出している二本の前歯・・・

「赤の勝ちでーす!」

 メガホンからの声に、大きな拍手と子供達の金属的な歓声が沸き上がる。

ジリジリと肌を焦がす炎天下のグランド。 ゆらめく陽炎の中で、玉入れの競技が終わった。

遠くで正午を告げるサイレンが聞こえ、アナウンスが子供達にお昼の休憩を知らせると、彼らは蜘蛛の子を散らしたようにテントの中から飛び出し、ポプラの木陰で弁当を広げる親たちの元へと駆け出して行った。

 トイチは一人グランドの片隅、真っ白な日差しと、むせ返る熱風の中、腕を組み、ただじっと立ち尽くしている。

薄汚れた開襟シャツ、ひざが抜けたズボン、曲がった片足を補うためか、上体を不自然な形にねじ曲げながら、トイチはただじっと立ち尽くしている。

 子供達のいなくなったテントには、親の来ていない数人の子供だけが寂しい黒い小さな影となって残されている。

浮かれ騒ぎに高揚した人々の目には、そんな彼らの姿は映らない。

 私はそっとテントに近づく。 そして、その中に同じクラスの友の姿を見つけた。

彼は早くに母親を病気で亡くしていた。

普段は人一倍陽気な彼も、仲間のいないテントの中では、ただのちっぽけな影の一つだ。

子供達は何故か寄り添うこともせず、それぞれのリュックから弁当を取り出す。

どの子の後ろ姿も同じように見えた。 同じように色あせて、くすんで見えた・・・

 友はこっそりと自分のリュックを開け、大きな新聞紙のかたまりを取り出すと、おもむろにその包みを開いた。

中からは明らかに自分の手で握られたと思われる大きな『おにぎり』が出て来た。

その時、私は気づいていた。トイチが彼らを見ていたことを・・・

 母親の呼ぶ声に振り向くと、遠くシラカバの木の下で家族が私を手招いていた。

私は急いで家族の元に駆け寄った。

芝生の上に色とりどりの御馳走が並べられている。

父親は姉をひざの上に抱き、隣に座る親戚のおじさんに自分の娘の足の速さをしきりに自慢している。

私は大きな卵焼きを口いっぱいに詰め込んで、精一杯の愛想笑いを浮かべた。

 30分もすると、満腹になった子供達はじっとしていることが出来ずに、グランドの脇に建てられたいくつかの出店の前に集まり始めた。

私もその中の一人に混じり、親からもらった30円を握り締め、アイスキャンデーを売る出店に向かって駆け出した。

その時だった。 私はテントの中で3人の子供に囲まれたトイチの姿を見つけた。

私は足を止め、ゆっくりと彼らのテントに歩み寄って行った。

それは優しい光景だった・・・

彼らは何も語らず、ただ静かに過ぎ行く時を見つめていた。

彼らの中に入って行けないことは自覚していた。

それでも私は彼らと一緒にいたかった。

彼らを包む優しい空気の中で、いつまでも静かに寄り添っていたかった。


「オイ、見てみろよ。トイチが俺たちのテントに上がり込んでるぞ」

 私の背後で声がした。

「ヤダー。何よ、あの人。コワーイ!」

「おーい、トイチがいるぞー!」

 気が付くと私の周囲には、既に数人の子供達が集まり始めていた。

「気違いトイチ!お前、何やってんだよ」

「お前なんか山に帰れよ!」

「トイチは帰れ!」

「トイチ!」

「トイチ!」

「トイチ!」

 子供達は跳びはねながら、大声ではやし立てた。

トイチは脅え切った目で、おどおどと周囲を見渡した。

狂ったような笑い声がテントを包み込むと、いつの間にかトイチを囲んでいた3人の子供の姿は消えていた。

そしてテントの中には、不安に脅え、立ち上がることも出来ない哀れな男がポツンと一人、取り残されていた。

 子供達の狂気は加速度を増し、とうとうその中の一人がトイチに向かって石を投げ付けた。

そして、その石はトイチの鼻に見事に命中した。

私は思わず、その石を投げた子供を睨みつけた。

彼は5年生で見たことのある顔だった。

トイチは鼻を押さえ、言葉を出せぬ者独特のかん高い声を発した。

しかし、その声はとめどなくあふれ出る赤い血にすぐにせき止められた。

流れる鼻血を両手で押さえ、トイチはその場から逃げ出そうと必死で立ち上がった。

その姿に子供達は脅え、叫び声を上げた。

石を投げた子供はグランドに飛び出すと、大袈裟に助けを求めて駆け出した。

トイチは自分が何一つ危害を加えるつもりはないことをその子に伝えようと、必死で少年の後を追った。

長靴を引きずり、大きく身体を左右に揺らしながら、必死で少年の後を追いかけた。

しかし、その時の姿は、誰の目にも彼が少年に襲いかかっているようにしか映らなかった。

大人たちが一斉にトイチに向かって駆け寄って行った。

トイチはあっと言う間に数人の男たちに取り押さえられた。

彼の細い腕はいくつもの屈強な腕によってねじ上げられ、鼻血で染まった彼の顔は焼け付いたグランドの上に力
任せに押し付けられた。


 私はすべてを見ていた・・・そして、何もかも知っていた・・・

しかし、私は『何も出来ず』、『何も言えず』、ただ(ちがう! ちがう!)と、心の中で叫び続けていた。

 私の目の前をトイチが引きずられて行く。

言葉にならぬ「むーぅ、むーぅ」という悲しい声を上げて・・・


 その後、運動会は何事もなかったかのように進められた。

グランドにはトイチの流した赤い血が、小さな黒いシミとなって残っていた。

そして、私の耳に、彼の「むーぅ、むーぅ」という声がいつまでも繰り返し聞こえていた。

 その日を境に、トイチの姿は町から消えてしまった。

私は何度か山の麓の彼の家に足を運んだのだが、その度見たのは肩を落として座り込んでいるトイチの年老いた親たちの姿だった。


 その後、しばらくして私は母からトイチの消息について聞かされた。

その話によると、彼は遠く離れた病院に強制的に入れられたという事だった。

そして、これも後で分かったことだが、あの石を投げた子供の親は、この町の有力者だったらしい。

もしかすると『町の浄化運動』を口実に、あの子の親が息子の『仇』をそうした形でとったのかも知れない。

加えて、私がその時の母の話の中で驚かされたことがもう一つだけあった。それはトイチの年齢だ。

どう見ても二十歳そこそこにしか見えないあのトイチが、実は33歳にもなっていたというのだ。

そして、あの日から24年が過ぎた今、私は彼と同じ33歳になろうとしている。


 脳に障害を宿し、口もきけず、不自由な片足を持つ『トイチ』という男を私は知っている。

 山の麓の小さな家で、年老いた両親と静かに暮らしていた『トイチ』という男を私は知っている。

 炎天下の日差しの中で、子供達の駆け回る姿を優しく見つめていた『トイチ』という男を私は知っている。

 血を流し、引きずられ「むーぅ、むーぅ」と、小さな声で涙を流していた『トイチ』という名の悲しい男を私は知っている。


 トイチは子供が好きだった。

 トイチは子供が大好きだった。

 そして、私は何も言えなかった・・・

 そして、私は何も言わなかった・・・


それが19**年、やけに暑かった運動会の日の出来事である。

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2008年2月26日 (火)

「最終兵器」ユウジ その2 (-。 -; )

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その後も私のユウジに対する特訓は続き、その特訓の効果が徐々にあがっていたある日のこと
彼からバイト先に意外な電話が入ったのであります。
「ねぇ、明日はバイト休みでしょう?俺の部屋で一緒に飲もうよ。ふふふ…」
何やら嬉しそうに話す彼に私は一抹の不安を抱いたのでふ。
「いいけど…お前、何かいやらしいこと考えてんじゃない?」
「違うよ!俺もかなり酒に強くなったしさ…それに…ちょっと会わせたい人もいるし…」
「なに?!まさかお前、彼女とか出来たんか?」
「ふふふ…まぁね。今度の彼女けっこう可愛いんだ」
「なるほどね。そう言うことか…」
どうやら彼は私と彼女に自分が酒に強くなったことを自慢したかったらしいのでふ。

そして、私は翌日、彼の部屋へと向かったのでふ。
バイト先の店から勝手にいただいた高級シャンパンと安物のジンを祝杯用に持参しながら…
「さぁ、入って!彼女紹介するからさ!」
ユウジの今度の彼女は彼の言うように、なかなかの美人で短大の1年生ということでした。
彼女の持参した手料理をつまみながら、私たちは高級シャンパンで乾杯したのでふ。
しかし、普段「ウォッカ」を飲んでいる私のような者にとって、「シャンパン」なんぞという代物は
サイダーかスプライトに毛が生えたようなもんで、酒とは認めることが出来なかったのでふ…
「お前と彼女はまだおこちゃまだから、二人でシャンパンでも飲んでなさい。んでね、悪いけど
私は大人だからちゃんとしたお酒を飲むことにいたしますわ」
 私はそう言って自分用にと持ってきたジンを勝手に飲みだしたのでした。
1時間ほど経過した頃でした。ユウジの彼女はほんのりと頬を赤く染めながら大学のゼミの話なんぞを
楽しげに話しておったと思います。
(ん~ん、この娘なかなか可愛いな…ユウジにはもったいない…)
 私が大きな眸で明るく話す彼女を見ながら不謹慎にもそんなことを考えていた時でした。
「よ~し、俺も「大人の飲み物」を飲むぞ!シャンパンなんかおこちゃまの飲み物だ!
さぁ、俺にもジンをついでくれ!」
すでにシャンパンで酔っぱらっているユウジが突然叫んだのでふ。
「お前、やめておきなさい。彼女の前だからって、そんなに頑張るこたぁないって…」
「そうよ。もうじゅうぶん酔ってるじゃない。それ以上飲んだら…」
「うるへ~ぇ!俺は飲む!飲むったら飲むんだ~ぁ!」
彼は私の手からジンをひったくると、私のマネをしてボトルから直接飲み始めたのでありまふ。
(ごく…ごく… ご… ごっ! )
突然、彼の動きが止まり、静寂が部屋を包み込んだのでありまふ…
そのとき我々が共有した静寂。あの緊迫した沈黙の長さを私はいまだに忘れることが出来まへん。
なんともイヤ~なあの雰囲気…
彼はビンに口をつけたまま、電池切れのロボットのように固まったままです…
「やっ…ヤバイよ。君、ちょっと避難した方がいいかも…」
私が彼女にそう言いかけた時です。 ユウジの手からジンのボトルが滑り落ちました。
「うぅっ…ん~! ん~!」
 彼は両手で口を押さえ苦しそうな声を発したのでふ。
「まっ、待て!そこで吐くな!今、ゴミ箱を持ってくるから、ちょっと我慢していろ!」
 ユウジは(もう、待てない!)といういう表情で必死で首を振りました。
「わかった!わかったから、おとなしくしててくれ!」
 泥酔したユウジがすでに正気を失っていることは、私にも泣きそうな眸で彼を見上げている彼女にも
一目瞭然でした。
そして、イヤイヤをするときの子供のように狂ったように首を振り続ける彼の目が徐々に白目に
なっていったのでありまふ。(オカルトだ… まるでエクソシストだ…)
「君、早く逃げるんだ!早く…あっ!」

ドブブブブブブ~ゥ!

 遅かった… そうです、もう遅かったのでふ…

首を振り続ける彼の口から機関銃のようにゲロが連射されてしまったのでふ。
すでに正気を失っていたユウジは制御不能の殺人マシーンと化していたのでふ…

そして、その最も大きな被害をこうむったのは逃げ遅れた彼女でありました。
ユウジの口から乱射されるシャンパンとジンと胃液で溶けた鶏の唐揚をふんだんに含んだ
酸っぱい臭いのする液体を彼女は全身で受け止めてしまったのでふ…

その後のことを私はこれ以上書くことは出来ません…

これが長い間、彼と私の間で極秘扱いとされていた
   伝説の「機関銃ゲロ事件」の真相なのでありまふ…

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2008年2月25日 (月)

最終兵器「ユウジ」その1 (-。 -; )

Jyunnjisann 昔、ワシの友人に「ユウジ」というまったく酒の飲めない奴がおりやした。

ユウジの夢は「女の前でかっこよくオンザロックを飲むこと」という本当にクダラナイものでありやした。

んで、結局はワシのとこに泣きついて来た訳です。

ある晩、ワシを自分のアパートに呼びつけると、奴はワシにこう言ったのでありやす。
(以下は奴とワシの会話だす。)

「どうしてもダメなんだ…俺、少しでも飲むとすぐに気持ち悪くなって吐いちまう。なぁ、お前しか頼める奴いないんだ。俺を酒の強い男にしてくれ!」

「お前なぁ、それって体質なんだからあきらめろって…」

「イヤだ!お前だって最初からそんなに強かった訳じゃねぇだろう。なぁ、秘訣はなんだ?強くなる秘訣ってなんかあんだろうよ!」

「ん~ん、秘訣ねぇ… 無いな。まぁ、あえて言うなら、命がけで飲みまくることくらいかな…人間、死ぬ気になりゃなんだって出来るさ」

(ワシは適当にごまかしてとっとと帰ろうと考えておりやした…)

「命がけで飲む…死ぬ気になればなんでも出来る…か…なるほどな…そうだよな…お前のいう通りだ。おし、やるぞ!俺はやる!必ずやる!だから今晩は俺に付き合ってくれ!頼む!」

土下座までされてワシは仕方なくしぶしぶ付き合うことに…

数分後、ユウジはスーパーの袋を下げて帰って来るなり「おし、始めるぞ…」と気合いを入れて袋の中の物を猛烈な勢いで食い始めたのでありやす。 レーズンバター・フライドチキン・ポテトチップ…

「なにやってんのお前?」

「胃に油分で膜を作るとアルコールの吸収が遅くなるんだ。モグモグ」

すべてを一人で食べ尽くすと、奴はおもむろに2本の瓶をワシの前に取りだしやした。 

赤玉ハニーワインとウォッカを…

「俺、甘い酒なら飲めそうだからこっち。お前はウォッカね」

いや~な予感がしたんでふ… と~ってもイヤ~な予感が…

そして、1時間後、その予感はみごとに的中することに…

いや、予想をはるかに超えた惨劇にその夜、ワシは遭遇することになった訳で… 


勢い込んでいた割に奴は超ビビリまくっており、いざ飲み始めるだんになって彼が用意したのは、「おちょこ」と「コップ」でありやした。

もちろん自分用が「おちょこ」の方でふ…

「お前なぁ… ワイン飲むのにこれはねぇだろうが…まぁ、いっか…」

ワシはあきれながらも、とりあえず飲み始めることにした訳でふ。

油膜作戦が功を奏したのか甘いワインがヨカッタのか、いつもならビールをちょびっとなめただけで死にそうな顔をする奴が、おちょこ2杯を続けざまに飲み干しやした。

「お~っ、スゲェじゃん。人間やれば出来るもんだね~ぇ…」

「心頭滅却すれば火もまた涼し!」

「なに訳の分かんねぇこと言ってんだか…」

「窮鼠猫を噛む!追いつめられた人間には恐いもの無し!」

「誰もお前を追いつめてねぇし…」

ワシがウォッカをボトル半分ほど空ける頃には、さすがに奴もペースダウンし、おちょこ1杯飲み干すごとに「油膜…油膜…」と呪文のようにつぶやきながら牛乳でそれを流し込んでおりやした。

気づくべきでした… その時点で奴を制止しとくべきだったんでふ…

(ん?なんだか急に静かになったな…)と、ワシが顔を上げると…

そこには世にも恐ろしい生き物がおりやした。

右手に「牛乳パック」、左手に「おちょこ」を固く握りしめ、口を大きく開け、白目をむいたまま完全に「フリーズドライ」してしまった「恐怖の大王」が…

(こっ、こえ~ぇ!)

ワシは恐怖のあまり一瞬にして自分の中のアルコールが消滅していくのが分かりやした。

(まさか死んでんとちゃうの? や~よ、そんなん!)

ワシは恐る恐る恐怖の大王の側に近づいて行きました。

どうやら呼吸はしているようでふ。

(よかった~ぁ… こんなんで死なれたらかなわんぜ…)

ワシはなんとか奴をベッドまで運び、横にならせやした。

5分ほど様子をみていたのですが、奴の状態にこれといった変化は見受けられなかったので、ワシはそっとバックレルことにしたのでふ。

帰り支度を整えて、ワシが部屋を出ようとしたまさにその時でした。

「うごっ… ウゴッ… 」

背後から奇妙な音が… 

振り向いた時、今度はワシの方が固まってしまいやした。

 「エイリアン」でふ! 今度は「エイリアン」がいたのでふ!

ベッドに横たわるユウジのお腹が「ウゴッ!」の音と共に異常なまでに膨張と収縮を繰り返しており、それはまさに映画の「エイリアン」で見た腹を突き破ってエイリアンが誕生するシーンそのものだったのであります。

(こっ、こわ~ぁ!マジで恐過ぎるっす!えっ?えっ?え~っ?なっ、なに?一体何が生まれるの~ぉ!?)

「んば~ぁ!!!!!」

あなたは恐らく見たことがあるでしょう。

泥酔した人が地面に向かって「滝」のように嘔吐している光景を…

だが、あなたは見たことがあるだろうか。

人間の口から真上に立ち上る「華厳の滝」を…

いや、それは「華厳の滝」なんぞではない。あれは…あれは…

そう、例えるなら「ナイアガラ」… 

何処かの国の天然パーマのメガネ豚が打ち上げた「テポドン」の様に、一直線に天へと伸びる「ナイアガラの滝」でふ!

そして、この地球には「引力」というものがあるのでふ。

「ニュートンのリンゴ」でふ。

そうでふ… 打ち上げられたものは、「落ちて」くるのでふ… 

「んば~ぁ!!!!」の爆音と共に打ち上げられた「ナイアガラ」は
信じられないことにアパートの天井で炸裂するとベッドに横たわる
白目をむいた恐怖の大王めがけて降り注いだのでありやす。

そしてワシは、「レーズンバター」と「フライドチキン」と「ポテトチップス」と「牛乳」と「赤玉ハニーワイン」と「胃酸」の混じった素敵なニ・ホ・ヒを全身に身にまとった「恐怖の大王」にそっと両手を合わせ、その部屋を無言で出て行ったのでありやした。

 めでたし・めでたし…

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最高の女性 (* ̄o ̄)σ

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(確かに美人だけど、ワシは良家のお嬢さんって苦手だなぁ…
お前もきっと苦労すんだろうな… やれやれ、ご愁傷様でふ…)

私の友人が彼女と結婚すると聞いたとき、正直、私はそう思っておりました。

彼女は頭脳明晰で物腰の柔らかい、実に落ち着いた女性で、
長身でスリム、長いストレートの髪をなびかせて歩くと
必ず誰かが振り向く…といった、まるでJJモデルみたいな人だったんす。

ある晩、その彼女を連れて友人が私の家を訪れました。
んで、3人で酒を飲んだ訳なんですが、このお嬢さん、意外にも酒豪。
私と同じペースでウォッカをガンガン飲みまくるんす。
(おいおい、なかなかやるじゃん…)私は心底感心しておりやした。
そのうちに友人が先にダウン。
私とお嬢さんは酔いも手伝って思いのほか話がはずみ、
爆睡する友人を無視して良い気分で飲みまくっておったのです。

(ん~ん、第一印象と違って、このお嬢さん話しやすくていい感じの人だなぁ…)

私がそんなことを感じ始めているときでした…

「amasitaさん、私、酔ってしまいました。今夜は最高に気分がいいです。ちょっとジーンズが窮屈なので脱がさせていただきます」

突然、お嬢さんがそんな突拍子もないことを言い放ったのであります。

「あっ、いや… それはマズイと思うんすけど…」

慌てて私が制すると、

「私、お部屋ではいつも下着も脱いでます。だから大丈夫。
気になさらないで下さい。あはははっ♪」

(「あはははっ♪」って、アンタ、いくらなんでもそりゃ気にするでしょう!)

しかし、戸惑う私をよそに、お嬢さんはTシャツと下着だけの姿になり
気持ちよさそうにあぐらをかくと

「amasitaさんもどうぞ脱いでお楽になって。あはははっ♪」

っと、屈託なく笑って下さったりして…

さすが良家のお嬢様、やることが大胆です。

えっ? 私ですか? 私は小心者の貧民の生まれです。
脱げる訳がありまへん…

向かい合わせの位置から席をずらし、決して視線を彼女の顔から
下げることなく、その後も頑張りましたよ。

(確かに一瞬だけ目の保養はさせていただきましたが…)

あれ? 今回ここで書こうと思っていたのは、こんなことではない!

話がどうにも本題に入れないな… 

まぁ、とにかく、そんな状況の中、このお嬢様から聞かされた話が
実に面白かった訳で…

なんとも不思議なもんです。

普通、大して自分のタイプじゃない女性だったとしても、
自分の目の前で女性が下着姿になったなら「オス」としては欲情するもんじゃないですか。

それがですね、その晩の私の「暴れん坊くん」は自分のタイプの美人の下着姿を見ても、
意外なことに「生真面目くん」のままなんです。

自分でも(おりょ?我が息子よ。今夜はどうしたん?)と声をかけたく
なるくらいにおとなしいんですわ。

んで、しばらく考えて分かったのは、どうやら私の「暴れん坊くん」は
目の前の対象を「メス」としてではなく、デッサンのときのモデルと
同等にとらえてしまったんですな。

今思うと、お嬢様があまりに整った体型をしていたせいじゃないかと
おもうのですが、マネキン人形を目の前に置いているような気がして
「欲情」のスイッチが入らないんですわ。

んで、(前をおっ立てたまま話をするくらいなら、このままの方が楽でいいや…)と、
自分なりに納得して、その時は酔いに任せてくだらない会話をパンツ姿のお嬢様と続けておりました。

お嬢様はこれまであまり私のような貧民の人種と接したことが
なかったらしく、私の話すドジ話や馬鹿話を身をよじらせて笑いながら
たいそう喜んで聞いて下さっておりました。

二人の前に置かれたニコライ・ウォッカがそろそろ空になろうと
していた時です。

彼女がこんな話をし始めたのです。

「amasitaさんって本当に楽しい方ね。私、こんなに笑ったことなんて
今までにないんじゃないかしら。でもね、私だってけっこうドジなんです。聞いてくださる?」

「いいっすよ~ぉ、なんでも話しちゃって下さい。酔っぱらい同士、
今夜は無礼講で行きましょうや。でも、半端なことじゃ驚きませんよ~ぉ!」

「これね、今まで恥ずかしくて誰にもお話ししたことがないの。
でも、自分でもあまりにおかしくって、思い出すたびに笑って
しまうのよ。よ~し、話しちゃおう!」

「そうだ!話しちゃえ~ぇ!(ほとんど完璧に酔っぱらい状態)」

「大学の時のことなの。私、トイレに行ってもほとんど学校では大きい方をしたことがないの。
普段は絶対に家に帰るまでは我慢しちゃうのね。でも、その時はどうしても我慢が出来なくて
講義を抜け出してトイレに駆け込んだのよ。なんとか間に合ったんですけど、用をたして
ふと見ると備え付けのトイレットペーパーがほとんどなかったの。
慌てて来たから、自分のポーチも教室に置いてきたし…
それで、どうしたと思います?」

「わかった。パンツをずらしたまま隣の個室に移動した!」

「そうなの!それをやったの!でも、ツイてない時って本当に
ツイてないのね。隣りもやっぱりペーパーがきれてたのよ。」

「あらあら、それで?」

「うん、仕方がないから、また最初の個室に戻ったんです。
そっちの方にはペーパーの芯に一巻き分くらいの紙が残っていたから…
でも、そんな量じゃ全然足りないじゃないですか。」

「んだね~ぇ。それで?それで?(興味津々の酔っぱらい)」

「それで、そのわずかな紙を小さくたたんで頑張ってお尻を拭いたのね… ぷぷぷっ」

「な~んだ。それだけか…」

「違うの!ここからが本題。紙がね…やぶれたの。それで… 指が… ぷぷぷっ」

「えっ? もしかして、突き破った? やっちゃった?」

「そう! それで、指にウンチがついちゃったの!」

「あちゃ~ぁ! やっちゃいましたか!」

「そうなの。やっちゃったの!それで私ったら(うわ~ぁ!きたな~ぃ!)って、
思いっきりウンチのついた指を振ったの。そしたらね。
ペーパーホルダーの金属の部分にその振った指がカチンって当たっちゃったの!
それで(痛~い!)って思って、思わずその指を口に…」

「入れたんすか!」

「入れちゃった~ぁ! あはははっ♪」

私は彼女が大好きになりました。

「最高の女性」だと思いました。


風の噂によると、その後、友人は会社を辞めて彼女のお父上の会社で「次期社長」となる為の
後継者修行をしているとか…

えっ? どうしてその彼との交流をやめたのかって?

だって、友達の奥さんに本気になっちゃマズイでしょう?

私は転職を機にその土地を離れ、新しい住所を彼には
知らせておりませんのよ… おほほっ♪ (-。-)y-

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