最終兵器「ユウジ」その1 (-。 -; )
昔、ワシの友人に「ユウジ」というまったく酒の飲めない奴がおりやした。
ユウジの夢は「女の前でかっこよくオンザロックを飲むこと」という本当にクダラナイものでありやした。
んで、結局はワシのとこに泣きついて来た訳です。
ある晩、ワシを自分のアパートに呼びつけると、奴はワシにこう言ったのでありやす。
(以下は奴とワシの会話だす。)
「どうしてもダメなんだ…俺、少しでも飲むとすぐに気持ち悪くなって吐いちまう。なぁ、お前しか頼める奴いないんだ。俺を酒の強い男にしてくれ!」
「お前なぁ、それって体質なんだからあきらめろって…」
「イヤだ!お前だって最初からそんなに強かった訳じゃねぇだろう。なぁ、秘訣はなんだ?強くなる秘訣ってなんかあんだろうよ!」
「ん~ん、秘訣ねぇ… 無いな。まぁ、あえて言うなら、命がけで飲みまくることくらいかな…人間、死ぬ気になりゃなんだって出来るさ」
(ワシは適当にごまかしてとっとと帰ろうと考えておりやした…)
「命がけで飲む…死ぬ気になればなんでも出来る…か…なるほどな…そうだよな…お前のいう通りだ。おし、やるぞ!俺はやる!必ずやる!だから今晩は俺に付き合ってくれ!頼む!」
土下座までされてワシは仕方なくしぶしぶ付き合うことに…
数分後、ユウジはスーパーの袋を下げて帰って来るなり「おし、始めるぞ…」と気合いを入れて袋の中の物を猛烈な勢いで食い始めたのでありやす。 レーズンバター・フライドチキン・ポテトチップ…
「なにやってんのお前?」
「胃に油分で膜を作るとアルコールの吸収が遅くなるんだ。モグモグ」
すべてを一人で食べ尽くすと、奴はおもむろに2本の瓶をワシの前に取りだしやした。
赤玉ハニーワインとウォッカを…
「俺、甘い酒なら飲めそうだからこっち。お前はウォッカね」
いや~な予感がしたんでふ… と~ってもイヤ~な予感が…
そして、1時間後、その予感はみごとに的中することに…
いや、予想をはるかに超えた惨劇にその夜、ワシは遭遇することになった訳で…
勢い込んでいた割に奴は超ビビリまくっており、いざ飲み始めるだんになって彼が用意したのは、「おちょこ」と「コップ」でありやした。
もちろん自分用が「おちょこ」の方でふ…
「お前なぁ… ワイン飲むのにこれはねぇだろうが…まぁ、いっか…」
ワシはあきれながらも、とりあえず飲み始めることにした訳でふ。
油膜作戦が功を奏したのか甘いワインがヨカッタのか、いつもならビールをちょびっとなめただけで死にそうな顔をする奴が、おちょこ2杯を続けざまに飲み干しやした。
「お~っ、スゲェじゃん。人間やれば出来るもんだね~ぇ…」
「心頭滅却すれば火もまた涼し!」
「なに訳の分かんねぇこと言ってんだか…」
「窮鼠猫を噛む!追いつめられた人間には恐いもの無し!」
「誰もお前を追いつめてねぇし…」
ワシがウォッカをボトル半分ほど空ける頃には、さすがに奴もペースダウンし、おちょこ1杯飲み干すごとに「油膜…油膜…」と呪文のようにつぶやきながら牛乳でそれを流し込んでおりやした。
気づくべきでした… その時点で奴を制止しとくべきだったんでふ…
(ん?なんだか急に静かになったな…)と、ワシが顔を上げると…
そこには世にも恐ろしい生き物がおりやした。
右手に「牛乳パック」、左手に「おちょこ」を固く握りしめ、口を大きく開け、白目をむいたまま完全に「フリーズドライ」してしまった「恐怖の大王」が…
(こっ、こえ~ぇ!)
ワシは恐怖のあまり一瞬にして自分の中のアルコールが消滅していくのが分かりやした。
(まさか死んでんとちゃうの? や~よ、そんなん!)
ワシは恐る恐る恐怖の大王の側に近づいて行きました。
どうやら呼吸はしているようでふ。
(よかった~ぁ… こんなんで死なれたらかなわんぜ…)
ワシはなんとか奴をベッドまで運び、横にならせやした。
5分ほど様子をみていたのですが、奴の状態にこれといった変化は見受けられなかったので、ワシはそっとバックレルことにしたのでふ。
帰り支度を整えて、ワシが部屋を出ようとしたまさにその時でした。
「うごっ… ウゴッ… 」
背後から奇妙な音が…
振り向いた時、今度はワシの方が固まってしまいやした。
「エイリアン」でふ! 今度は「エイリアン」がいたのでふ!
ベッドに横たわるユウジのお腹が「ウゴッ!」の音と共に異常なまでに膨張と収縮を繰り返しており、それはまさに映画の「エイリアン」で見た腹を突き破ってエイリアンが誕生するシーンそのものだったのであります。
(こっ、こわ~ぁ!マジで恐過ぎるっす!えっ?えっ?え~っ?なっ、なに?一体何が生まれるの~ぉ!?)
「んば~ぁ!!!!!」
あなたは恐らく見たことがあるでしょう。
泥酔した人が地面に向かって「滝」のように嘔吐している光景を…
だが、あなたは見たことがあるだろうか。
人間の口から真上に立ち上る「華厳の滝」を…
いや、それは「華厳の滝」なんぞではない。あれは…あれは…
そう、例えるなら「ナイアガラ」…
何処かの国の天然パーマのメガネ豚が打ち上げた「テポドン」の様に、一直線に天へと伸びる「ナイアガラの滝」でふ!
そして、この地球には「引力」というものがあるのでふ。
「ニュートンのリンゴ」でふ。
そうでふ… 打ち上げられたものは、「落ちて」くるのでふ…
「んば~ぁ!!!!」の爆音と共に打ち上げられた「ナイアガラ」は
信じられないことにアパートの天井で炸裂するとベッドに横たわる
白目をむいた恐怖の大王めがけて降り注いだのでありやす。
そしてワシは、「レーズンバター」と「フライドチキン」と「ポテトチップス」と「牛乳」と「赤玉ハニーワイン」と「胃酸」の混じった素敵なニ・ホ・ヒを全身に身にまとった「恐怖の大王」にそっと両手を合わせ、その部屋を無言で出て行ったのでありやした。
めでたし・めでたし…
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